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2005年7月 2日 (土)

読みかけの「靖国問題」

 時々お邪魔したりトラックバックさせていただいているFeldDorfさんの「狸議長の寝入り」に、信教の自由の問題と、靖国問題に関する記事が有りまして、丁度現在「靖国問題」高橋哲哉(ちくま新書)を読んでいるので若干の感想を書いてみたい。

 世間一般には靖国にA級戦犯が合祀されている事が問題をややこしくしていると考えられているが、哲学的観点からの考察の中で、では靖国にA級戦犯となった東条らが合祀されていなければどうなのかとの問題提起が有る。靖国そのものが実は戦死者の追悼施設ではなく顕彰のための施設なのだと分析している。靖国には東条らを除いたとしても約240万の戦死者が祀られている訳だが、(僕の伯父の一人も、戦死したために祀られている。)この240万の殆ど全ては、日本が明治以後に行った朝鮮中国を始めとするアジア侵略の過程で、2000万とも3000万とも言われるアジアの膨大な犠牲者とそれを上回る被害者を作り出した加害者たちである。

 戦場で死ねば神として祀る事で、命を惜しまず戦場に動員されていく事を肯定する意識を作り出し、本来であれば夫・兄弟・子供を失って悲しみに暮れる人々にそれを許さず、「靖国の妻」「靖国の母」である事を光栄に思う様に意識操作、今日で言うマインドコントロールのための装置が靖国の本質なのだ。

 東条らA級戦犯が分祀されたとした場合、今まで天皇が参拝する事に躊躇してきた訳だが、その歯止めが無くなり、政府高官による靖国公式参拝への歯止めも無くなる。そして、戦前同様に侵略戦争の尖兵となった戦死者たち、アジアへの加害者たちが「神」として天皇自ら祀る事が出来る様になる。それで良いのか?

 韓国や中国はA級戦犯が合祀されている靖国への公式参拝を批判する事で、実は政治決着を諮ってきていた。何故なら彼らと言うスケープゴートが存在しなければ、240万全ての「英霊」が加害行為の結果として祀られ讃えられている施設、靖国その物の廃止を要求しなくては国民全体に良い訳のしようがなくなるからだ。中国政府は日中友好のために「罪を憎んで人を憎まず」として、悪いのは日本軍国主義であると言う立場から戦後の保証問題などでは意図的に日本国民の戦争責任を除外してきた。その前提が無くなってしまうのだ。

 日本人全てが堂々と侵略戦争を肯定する施設を参拝した場合どうなるのか。今日でさえ「あたらしい教科書をつくる会」の歴史・公民教科書が文部省の検定に合格し、それを採用しようとする右翼勢力の跳梁がある中で、そのような事態になればますます中国・韓国を始めとするアジアの人々は日本が明治以来の侵略と侵略戦争を肯定しているとして反発を招くだろう。問題を政治的にうやむやのままに納めるのなら、A級戦犯を合祀したままで小泉総理が靖国参拝を止める事が一番であろう。

 では、日本人として戦争責任を取る立場から考えるのならば、靖国そのものの廃止を求めて運動する以外の道は無い。例えどの様な困難が有ろうとも、日本人は明治以来の侵略と侵略戦争で流されたおびただしいアジアの人々の血を償わなければならない。

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