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2005年10月 4日 (火)

生保、自殺免責延長はおかしい

 今朝の毎日新聞一面に民間生保各社が自殺による免責期間を契約者に周知することなく延長していることが報道されていた。長引く不況の影響により自殺者が連年三万人を超える中、経営への影響を嫌う国内生保が、外資系生保に合わせる形で延長に動いているという。経営優先・営利優先の民間生保ならではの動きだが、それ以前から外資系生保は自殺による免責期間を三年としていることなどから考えると、郵政民営化による外資=アメリカ系生保による日本市場支配が既に現実の物となって動き出していると思える。簡易保険の営業に当たっては自殺による免責が一年であることを顧客に説明しているのだが、民間生保各社は契約者には不利益となるこの条項について十分に周知することなく契約を行っているようだ。

<自殺免責期間>2年を3年に延長 生保大手各社 

 生命保険の契約後、一定期間内に契約者が自殺した場合、生保会社が保険金を支払わない「自殺免責」について、大手各社が相次いで2年から3年に延長していたことが3日、明らかになった。自殺して保険金を受け取り借金返済などに充てるケースが増えているとの指摘があるうえ、自殺者急増で保険金支払いが想定を大きく超える可能性が出てきたためだ。ただ、遺族に大きな不利益が生じるにもかかわらず期間延長は十分に周知されておらず、免責期間の根拠などを説明するよう求める声が強まっている。【坂井隆之】
 ◇「自殺抑止」が目的? 実際は支払い急増
 大手生保各社の自殺免責期間は、99年ごろまで1年で共通していた。00年前後から、各社は相次いで免責期間を延長、国内各社は2年を免責期間に設定した。ところが、同時期にアメリカンファミリー生命保険など外資系は免責期間を3年に延長。自殺者が急増する中、外資系と国内勢の間で保険金の支払額に大きな差が生じる可能性が出始めていた。
 このため、明治安田生命保険、住友生命保険、日本生命保険など国内勢も04年以降、免責期間を3年に再延長。第一生命保険も10月から3年に延長、各社の免責期間はほぼ横並びになった。ただ、各社とも免責期間延長前の契約者については、2年のまま据え置く。
 免責期間延長について、各社は自殺者数が98年以降3万人を上回るなど社会問題化していることを背景に、「保険金が簡単に支払われることが、自殺を助長している可能性がある」(第一生命)と指摘。免責期間延長は、自殺抑止が目的との考えを強調する。
 ただ、自殺急増で保険金支払いが増加していることも、免責期間延長の大きな理由とみられる。ある大手生保では、過去10年で自殺に対する死亡保険金支払額が1・5倍以上に急増。総支払額に占める自殺への保険金支払額の割合も10%を超えたという。
 04年3月には、数億円規模の保険金自殺をめぐる訴訟で「明らかに保険金目的の自殺であっても免責期間経過後であれば支払いを拒否できない」との最高裁の判断が示された。このため、生保各社は「巨額の請求を防ぎ、保険金支払いを抑制するには免責期間を延長するしかない」(大手生保幹部)と判断している。
 自殺免責など契約者にとっての「不利益条項」は、各社とも契約書とは別に書面で説明している。ただ、各社とも2年から3年への延長は特に発表しておらず、約款でも3年に延長したことは注意喚起していない。
 生保に詳しい慶応大学商学部の深尾光洋教授は「契約者間の公平性確保や自殺抑止のための対策は必要」としながらも「契約者に不利益な条項だけに、募集時の十分な説明が不可欠。うつ病などが原因で自殺した場合には『病死扱い』として支払いに応じるなど、運用面での配慮も必要だ」と指摘している。

(毎日新聞) - 10月4日3時7分更新
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コメント

 人の死によって儲かるという、ある意味死の商人が幅をきかせている社会は打倒されなければならないと、怒りを新たにします。あおさかなさんは法律的な面で闘われていますが、私は何としても健康を回復して、労働者人民のための金融機関としての郵貯・簡保労働者として闘いたいと思います。

投稿: アッテンボロー | 2005年10月 5日 (水) 23時39分

生命保険にかこつけていうと、団体信用生命保険というのがあって、
サラ金から借金するといつのまにかその保険に入っていることになります。
で、債務者が自殺に追い込まれるとサラ金は約定利息を含む全額と同額を、
生命保険会社から受け取れることになります。
しかもそれには法律的に無効な利息額も含みます。
債務者が生きていて破産を申し立てると貸し倒れになる
(それはそれで損金処理できるんでサラ金はいたくもかゆくもないんですが)、
法律家にアクセスして有効な利息によるひき直し計算をされてしまうと、
場合によってはそれまで取りすぎていた利息分を返還しなくてはならなくなる、
サラ金にとって顧客が「死んでくれた方がありがたい」という構造が出来上がってしまっているのです。
うちの「業界」では今この問題に切り込む切り口を探しているところです。

投稿: あおざかな | 2005年10月 5日 (水) 22時45分

 セーフティネットを無くした方が企業としては儲かりますから、郵政民営化を通して契約者に有利な制度を無くし、金融資本にとって一方的に有利な社会を作ろうというのが小泉の言う「改革」だと思っています。

投稿: アッテンボロー | 2005年10月 5日 (水) 09時32分

 生保の経営を圧迫するほど自殺者が増えているとは恐ろしいですね。
 セーフティーネットとしてのゆうちょ・かんぽの重要性は、いつになったら認識されるようになるのでしょうかねえ。

投稿: 労働者L | 2005年10月 5日 (水) 06時54分

 Felddorfさん、家にお越し頂くのは久しぶりですね。実際民間生保は商品説明もろくにしないで契約をするので、お客さんから民間生保の商品内容について質問を受けることがしばしばあります。丁寧に説明すると大抵のお客さんは騙されたと怒り出すんですが、別に郵便局員だからデタラメを言うわけではなくて、証書に書かれた内容の説明をするだけなんですけどね。
 民間生保の義理人情プレゼント商法、略してGNPというやり方はバブル崩壊以降通用しなくなっていますね。

投稿: アッテンボロー | 2005年10月 4日 (火) 20時59分

とゆーか、生保って昔から一方的に見積書と契約書を差し出して「ハンコ押してください。」っていう商売のスタイルですよね。生保の外交員は殆どが歩合制ですし。商品の説明をしないのは今に始まったことではありませんが…

投稿: Felddorf | 2005年10月 4日 (火) 19時14分

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