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2006年1月 5日 (木)

関西生コン支部の闘い

 今月13日で関西生コン支部の武建一委員長が不当にも逮捕されてから丸一年が過ぎることになる。私は昨年「耐震偽造問題と労働運動」と題して関生支部の闘いを紹介した。年末に関生結成から昨年の弾圧に至までの詳細なルポルタージュである「告発!逮捕劇の深層 生コン中小企業運動の新たな挑戦」を読了し、より詳しい経過と何のために大阪府警公安部が労働運動弾圧のために介入しているかについての一層の理解をすることが出来た。関生の闘いを詳しく紹介することで、労働運動にとって総研やヒューザー・木村建設などの小物のみに止まらず、日帝独占資本その物と真っ向から切り結ぶ事の必要性を訴え、今日の耐震データ偽造問題が実は氷山の一角に過ぎないことに警鐘を鳴らしたい。

 生コン業界というのは中小零細企業が殆どで、親会社にセメント資本を持つ場合も多く、そのセメント販路拡大のために次々と新しい企業・設備が開設され乱立状態にある。そしてその生コンの販売先であるゼネコン各社からは常に安い値段での買い叩きを受けるために、高く仕入れて安く売るという実態が約50年の長きにわたって続いている業界である。当然その為には労働者に対しては低賃金での長時間労働が強制され、品質の保持など関係ない粗悪品の販売を通して生き抜こうとする悪徳業者が後を絶たない。武委員長は65年全自運(全国自動車運輸労働組合)関西生コン支部委員長になって以来40年、現在の全日本建設運輸連帯労働組合(連帯労組)関西生コン支部と組織変更まで一貫してその職に就いてきた。つまり武委員長の経歴は文字通り生コン労働運動と一体の物としてある。

 組合結成以前の職場では月の残業時間が200時間を超え、年間休日は三が日のみと言う劣悪な労働条件が当然であった。そして組合自身も会社側の労務管理組織の一環として結成されている物が多く生コン労働者は本当に社会の底辺に置かれる存在であった。時には労務担当としてヤクザが雇い入れられナイフを突きつけて労組からの脱退を強要したり、武委員長自身五回も拉致監禁された経験を持っている。更には経営者に依頼されたヤクザに殺害された組合員も二人いる。その様な状況の中で武委員長達は生コン労働者にも人並みの生活を要求して闘いを着実に前進させてきた。

 70年の万博景気の反動で、関西の生コン需要は激減する。その後の中小企業は次々と倒産や工場閉鎖の憂き目にあうことになる。その時関生支部は企業別ではなく産別組合として運動を発展させてきた経験から、経営者に対して中小企業も連帯することでゼネコン資本の買いたたきに対抗し、生産調整を行うことを提起する。よく労組が強いと経営に響くなどという俗論を言う者がいるのだが、実際には産別労働運動の場合にはそれは当てはまらない。企業別組合が主流の日本においては、それらの組合の殆どは企業の経営危機を強調されると「会社有っての従業員」という狭い視野からの物の見方によって企業経営者のために労働者の労働条件を切り売りし、その事で経営者の手先となることが多い。ところが関生の場合には一人で加入できる産別組合という形態をとっているために多くの企業のすべての労働者の労働条件、生活を守るために幅広い視点から生コン産業全体の生き残る道を模索したのだ。生コン企業に対しては協同組合の設立と加入を呼びかけ、その事でセメント資本、ゼネコン資本に対する交渉力を強化し、更に個別の生コン企業からその背後に存在するゼネコン・セメント資本に対する申しいれを行うことで、セメントの仕入れ値を下げさせ、生コンの販売価格を適正な価格に戻すよう交渉した。個別資本の背後にいる銀行資本に対してもその取り組みは広げられていった。

 生コン支部の闘いは大きく広がり続け、その発展に対して80年代になってから資本と警察とヤクザとが一体となった弾圧、組織破壊の攻撃がかけられる。当時の日経連会長でセメント協会会長でもあった大槻文平は「組合運動の範囲を超えた組合があって、セメントの不買なども行われており、こうした動きは十分警戒しなければならない」「関西生コンの運動は資本主義の根幹に拘わる運動をしている」などと敵対心を顕わにしている。関西生コン支部の当時の上部団体である運輸一般は、後の全労連の前身である統一労組懇に参加する共産党の影響力が強い組合で、事実関生支部にも数百の共産党員が存在していたのだが、共産党は闘争の発展による弾圧が運輸一般および共産党にまで広がることをおそれ関生を切り捨てる。この構図は現在の国鉄1047名闘争においてもあくまで現職復帰を求めて闘う闘争団に対して権利停止を始めとする様々な処分を降ろしているのが国労内部の共産党系役員であることとまったく同じ構図である。関生と運輸一般の良心的組合員の多くは共産党と袂を分かち連帯労組となる。

 弾圧の結果組織と協同組合運動はいったん後退することになるが、90年代に入りバブル崩壊の結果再び生コン業界にとって困難な時期に入るや、企業経営者の中にも関生を始めとする関連組合との共闘によって生き延びることを選択する者達が現れてくる。そして95年の阪神淡路大震災の被害が起こる。安全と思われていた高速道路の倒壊など様々なコンクリ作りの建造物が崩壊するのだが、その多くは70年代から80年代の景気後退期に粗悪な生コンを使用していたり、鉄筋の変わりに空き缶やゴミなどが混入していると言う者であった。関生は労組として独自にこれらの調査を行い、品質管理こそが生コン業界の生き残る道であることを確認し、協同組合運動を再度前進させ始めた。そして一定の成果が現れるようになってきた今日かけられたのが、今回の武委員長を始めとする役員への逮捕弾圧であったのだ。

 耐震データ偽造問題はけして姉歯元建築士のみの行った個人的犯罪ではない。その背後には常に生コンを買いたたくことで超過利潤を得ようとしてきたゼネコン全体の体質があるのだ。関生支部への弾圧に抗議し、守り抜き、安全な生コンを供給できる業界と労働者が人間らしく生きられる労働条件を勝ち取ることが、二度と耐震データ偽造問題を繰り返させないために必用である。

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コメント

  luxemburgさん、野良狸さん、お早うございます。関生支部の闘いは労働者による新たな運動の方向を示していると思います。この闘いを守り発展させていくことが、労働者の将来にきっと実り多い社会をもたらしてくれる物と思っています。

投稿: アッテンボロー | 2006年1月 7日 (土) 09時31分

トラックバックをありがとうございました。
関西生コン支部の話、とても勉強になりました。
不当に逮捕されて、簡単に一年も捕まったままだということに驚かされます。

投稿: 野良狸 | 2006年1月 7日 (土) 00時43分

トラックバックありがとうございました。前に関生の話も読ませて頂いておりました。
単なる労働組合というより、工場評議会に通ずるものがありますね。この動きが拡がっていけば日本は本当に大きく変わるとおもいます。できるだけ私のブログでも取り上げたりリンクを張ったりするようにしたいと思います。いい情報をありがとうございました。

投稿: luxemburg | 2006年1月 6日 (金) 22時24分

 素楽さん、ようこそお越し下さいました。あまり触れなかったのですが、関生支部などの取り組みによって、現在ではかなり労働条件も向上しています。それでも不況期には生コンの安売りを要求するゼネコンの圧力で低下してしまうことも多いようです。勿論現在関生支部にかけられている弾圧は、協同組合と労働組合の双方を解体して生コンを買いたたくことが目的ですので、何としても関生を防衛する必用があると思います。
 覆うとさんが郵便局員だそうですね。残念なことですが、若い層の人にとっては組合が身近な者になり得ていません。弟さんから話しがないのはその為でしょうね。

投稿: アッテンボロー | 2006年1月 6日 (金) 17時55分

ちなみに、ウチの弟も郵便局員で過疎地で配達やったりセールスやったりしてます。公社1期生だったかな。
組合の部会長らしいけど、あんまりそういう話聞いたことないなぁ。

また勉強させて頂きます。ありがとうございました。

投稿: 素楽 | 2006年1月 6日 (金) 11時34分

シャバコンの背景にはこういう問題があったんですね・・・。
しかし月200時間超の残業とは・・・人間にはムリ。
見た目だけはキレイな街並みはこうやって組み上がってきたのか。
上からの押さえつけは鉄のトライアングルでも、足元は脆弱だったのですね。
しかし頭が下がる人も世の中には多いなぁ。
こういう人が正当に評価される社会になって欲しい。足元の強い社会になって欲しい。

投稿: 素楽 | 2006年1月 6日 (金) 11時26分

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