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2006年2月14日 (火)

「帝国主義論」その2

 昨日に続いて帝国主義論について考察しようと思う。最初に断っておかなければならないのが、中核派の理論上の最新の成果である「現代帝国主義論Ⅱ」はまだ手元にないために現時点で私が書けるのはレーニンの本を基本通りに読むことである。20年前に出た「現代帝国主義論」は引っ張り出せない状態になっているので今回はあまり触れることが出来ない。

 早速脱線することを許して欲しいのだが、第二次世界大戦の後にアジアアフリカにおいては多数の植民地が独立を回復した。その為にそれ以前の植民地体制がいったんは崩壊することになる。だがしかし政治的には形式上の独立を回復した諸国も、経済的には諸帝国主義に従属し、経済を通じて支配される新植民地主義体制という物が出来上がった。日本も戦後補償の一環としてアジア諸国に様々な経済援助を行うことを通じて経済的にアジア諸国の政権を支配し、資本の輸出を行ってきた。ODAの殆どが「紐付き」と言われる状況であった。最も身近な隣国である韓国についても65年の日韓条約から始まる経済侵略があるわけだが、当時の韓国の政治状態は軍事独裁体制であった。

 20代の若い方には分かりづらいかも知れないので簡単に韓国の現代史について触れたい。先ず日本の支配が終了した敗戦の45年以降、朝鮮軍と関東軍との管轄の境界である38度線を境に関東軍の後にソ連軍、朝鮮軍の後に米軍が進駐する。朝鮮における対日独立運動の中ではソ連の影響力が強く、当初は統一選挙を行って朝鮮人民共和国という国家が建設される予定であった。それに対してアメリカが反共主義の政策上南半分で独自の選挙を行い大韓民国を樹立する。初代大統領は李承晩(イスンマン)である。それに対抗してソ連も北半分で金日成による朝鮮民主主義人民共和国を成立させ、今日の半島における分断体制が築かれる。反共国家を強権で築いた李承晩は60年の4・19学生革命で打倒されるのだが、それも長くは続かず朴正煕(パクチョンヒ)のクーデターで軍事独裁政権が成立する。79年の朴正煕暗殺の後、民主化が訪れるかと思われたが全斗煥らによる粛軍クーデターにより再び軍事独裁政権となる。朴政権と全政権を政治的経済的に支えたのは日米両政府であった。そしてその体制下で日本は韓国の低賃金を目当てに資本輸出を行い多大な超過利潤を得ることが出来た。

 80年代後半の民主化闘争の過程において、最初に立ち上がったのは学生であったがその闘いは労働者にも波及する。労働条件の改善と賃上げを求める広範な闘いが巻き起こる中で日本企業はその工場をタイや中国などに移転し始める。アジア渡り鳥企業と呼ばれる物が多数合った。例えば私自身が支援に参加したアジアスワニーという企業の労組の場合、元々四国で工場を持っていた企業が低賃金に目を付けて韓国に工場を建設するのだが、諸要求の前にFAX一枚の通知で工場閉鎖と全労働社の解雇を通知したことから労働争議が始まる。80年代後半にはその様な争議が多数巻き起こり、日本の本社に対する抗議行動に来日した韓国の労働者と日本の労働者との支援共闘が各地で築かれた。韓国政府は労働運動を弾圧することで日系企業が他のアジア諸国に移転しないようにしようとしたため、政府と親会社双方を相手取った困難な闘いが粘り強く行われた。今日でもサムスン電機などは韓国を代表する電機メーカーなのであるが、その工場で使われている部品の大部分は日本から輸入した物で、仕入れ高は1兆円に上り対日赤字の総額と同じである。今日でも韓国企業は様々な形で日米の資本に従属しているのだ。

 この様な新植民地体制諸国の問題を抜きに「植民地が無くなった」等と言って戦後の資本主義が帝国主義ではなくなったかのように言いなすのは全くおかしな事ではないだろうか。韓国における軍事独裁政権については岩波新書「韓国からの通信」第1集~第4集を是非とも読んでいただきたい。また「書評日記 パペッティア通信」で紹介されていたのだが「韓国現代史」(岩波新書)も中々勉強になりそうである。先日取り寄せたのでなんとかして早く読もうと思っている。次回以降はまた「帝国主義論」に則して記事にしたい。

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「経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

 今、「現帝論Ⅱ」の第一部第六章の途中まで読んでいますので、紹介していただいた部分まで一両日中には読めるのではないかと思います。

投稿: アッテンボロー | 2006年2月19日 (日) 07時32分

島崎さんの『現代帝国主義論』230ページ付近をお読みください。宇野の『経済政策論』の引用と説明がされていると思います。
自由主義段階(産業資本的蓄積様式)の恐慌と、帝国主義段階の過剰資本についての記述は、『経済政策論』を受けてかかれたものです。
帝国主義が金融資本的蓄積様式だという指摘は『前進』にも、ときどき出てくるキーワードです。
なお、島崎さんの『帝国主義論』解説書には、
独占資本という言葉に特化する日本共産党系の問題点と、金融資本に特化しすぎた宇野弘蔵についてのべてあります。

投稿: 日本国憲法擁護連合 | 2006年2月19日 (日) 05時52分

 私の場合宇野弘蔵は読んでいない物でその辺は詳述することは出来ませんね。

投稿: アッテンボロー | 2006年2月18日 (土) 21時58分

帝国主義論が展開されていますが、
帝国主義とは端的にいってなんでしょう?
それは、金融資本的蓄積様式のことです。
つまり金融資本が支配的な資本主義ということです。日共系は独占資本といういいかたをしますが、独占資本という資本は存在せず、正しくは、金融資本的蓄積様式における資本(金融資本)の独占化なのだということです。こうしたとらえ方として、「金融史本論」と「帝国主義論」そして宇野弘蔵の諸理論を読みこなすといいでしょう。そのうえで本多さんや島崎さんの著作が理解できるということなのです。
といっても、島崎さんのいうように、宇野弘蔵のように金融資本に特化しただけでは事足りえないわけですけれども。

投稿: 日本国憲法擁護連合 | 2006年2月18日 (土) 10時23分

 kamakazuさんお早うございます。バナナのプランテーションに関する本は私も読みました。モノカルチャーの強制によって現地の人々の生活が破壊されている有様を知り、帝国主義への怒りが増した覚えが有ります。
 学校教育では本当のことを伝えられないもどかしさという物があるでしょうね。日本などの帝国主義が以下にアジアアフリカ中南米の人民から収奪しているか、知らないままに大人になった人間が今のネット右翼になっているのではと思います。
 草加さん以前の書き込みへの返信でアジアスワニーのことが漏れていました。私は草加さんが活動されていた時期とずれていると思っていたんですね。それでご存知なのを以外と思ったようです。
 オルグにも対象によって色々な方法があると思います。強引な手法がよい相手とじっくり話し込んだ方がよい相手と対象によって変えるのがよいようですね。

投稿: アッテンボロー | 2006年2月17日 (金) 08時47分

kamakazuさん>
お元気そうでなによりです。ところで、
>キミには価値観と言うものがない。
>何を理解して欲しいのか、何を伝えたいのかが見えない
と、いうのは、かつて私のオルグに対して同志諸君からよく言われたことでして(笑)。
どうも「左派的な政治談議」に終わってしまうんですよね、私のオルグは。

やはり「11・11集会に参加してください。いや、しろ!」みたいな「あなたに何を求めているか」を具体的に提起して、それに対する相手の反論(=参加できない理由)を潰していくような形が、一番成果があがるのはわかってるんですけどね。どうしてもそういう「セールストーク」みたいなんはようせんかったです。

ところが、実際にはそうして「なかば強引に」集会につれてこられたみたいな人がいて、なんだか申し訳ないなあとか思っていたら、そういう人がすぐ自分から組織に結集して献身的な活動家になったりする。結局は背中を押して欲しかったって言うか、行動はしたいけど、いろいろ自分で壁を作っているだけなんですよね、そういう人は。私みたいな作風は、かえって相手の意識や力量を見下していただけというか。

でも、やっぱりこれが強引にはなりきれんのですよね。>私。

投稿: 草加耕助 | 2006年2月17日 (金) 07時45分

「人を食うバナナ」(岩波新書)は、我が家にも実在します。非常にショックだったのは、米帝資本が日本国人民にバナナを売りつける目的でやっている行為よりも、小規模に荷担している日本企業があったこと。記憶によると住友系の「バナンボ」と言う会社でした。このことに非常に悩み、苦しみました。かなり怒り狂って、「デルモンテを買うことがあってもバナンボは絶対に買わないぞ」と思いました。スワニーの手袋は、それ以前に一回ぐらい買ったかもしれません。「手袋の スワニぃー」って、テレビで宣伝したのを覚えていますよ。そのあと、事態を知って、絶対に買わないと心に決めました。

以下、またしても、ネタ話です。

1986年、教育実習で授業をすることになった俺が教えるテーマが、中一の地理の「東南アジア」でした。日帝の悪事の数々を並べ立てた資料を満載にして、授業に臨んだのですが、「kamakazuくん、これは中学生には難しすぎる」と担当教官に言われました(笑)「人を食うバナナ」は悲惨過ぎるので、もうちょっと軟い「アジア絶望工場」(鎌田慧)を使ったのですが(^^;

担当教官の言葉が思い起こされます。いっしょに実習に行ったもう一人には「キミには価値観と言うものがない。生徒に何を理解して欲しいのか、何を伝えたいのかが見えない」と言っていたのですが、俺には「キミのはあまりに主義主張が出過ぎている」という意見がつきました。いいですよ、どうせ俺は、「安保-日韓体制打倒!」です。ヒロシです・・・・

投稿: kamakazu | 2006年2月17日 (金) 03時28分

 草加さんの指摘で思うのは、私の理解がずれてきているのかも知れないということですね。

投稿: アッテンボロー | 2006年2月16日 (木) 17時02分

70~80年代の活動家で、アジアスワニーを知らない人はいませんよ。フィリピンバナナのプランテーションと並んで、経済侵略の代名詞でしたからね。

>新植民地主義による支配では・・侵略企業
>の利権を守ることが難しくなっているからこ
>そ、今日日帝は古典的帝国主義的侵略戦
>争への道を踏み出しているのだと思います

んー、これは「アジア、第三世界人民の進撃に追い詰められた帝国主義の共同侵略反革命戦争」というブント系の理解とどこが違うのかな?「共同」がつくかつかないかという部分でしょうか。「反革命」もつかないのかな?
だとしたら、「安保粉砕・日韓連帯」が戦略的には位置づかないような気がしますが?

投稿: 草加耕助 | 2006年2月16日 (木) 03時35分

 スルタンガリエフさんご教示有り難うございます。帝国主義の表れが軍事的に植民地を獲得することだけに現れるのではないと言うことが良く分かります。
 草加さんもアジアスワニーはご存知だったんですね。NHKの番組は知りませんでしたが、ざまを見ろと言うところでしょうね。
 新植民地主義による支配ではアジアスワニーのような侵略企業の利権を守ることが難しくなっているからこそ、今日日帝は古典的帝国主義的侵略戦争への道を踏み出しているのだと思います。

投稿: アッテンボロー | 2006年2月15日 (水) 19時17分

もう随分前ですが、「アジアスワニー」はNHKドキュメンタリーで、中国に進出した日本企業として取り上げられていました。
アジアスワニーがどんな企業なのか、韓国で何をしてきた企業なのかといった背景説明はいっさいなく、ただ中国に手玉にとられて右往左往している様だけが、アジアスワニー側の担当者の目を通して描かれていました。

最初は中国側の「誘致」に乗る形で進出したらしいです。おそらく、民主化した韓国などから脱出し、「独裁政権下」で政府の庇護の下に甘い汁が吸えると考え、これまでの反共軍事政権との癒着と同じノリで安易に進出したのだと思います。

ところが実際には、中国を日本の下請け工場とすることは許されず、甘い汁を吸うどころか、中国側にもちゃんと利益が還元される仕組みを次々と要求されて四苦八苦。あげくの果てには、当初あてがわれていた一等地を追い出されて、「そこにはIT関連の工場を誘致するから移転してくれ」と通告されて、ついにアジアスワニーの担当者は中国側の担当者と、テレビカメラの前でボロボロと泣き出す始末。「充分な移転先は苦労して確保したんですよ」と中国側になだめられる有様でした。

私はアジアスワニーの軍事独裁政権時代の韓国での悪行を知っていましたから、少しも同情しませんでした。これが侵略企業の末路なんだと、溜飲を下げる思いで見ていました。ざまあみろ!と。

いずれにせよ、今まで現地の人々を、独裁政権下の庇護のもとで好き勝手に搾取し、傍若無人にふるまってきたアジアスワニーのごとき侵略企業は、アジアや第三世界の人々が力をつけてくる中で、もはや行き場所を失っています。中国も、反人民的な独裁政権であることにいささかの変わりもありませんが、すくなくなとも、自国民を日本資本に売り渡していた朴正煕政権のごとき「売国奴」ではありません。

投稿: 草加耕助 | 2006年2月15日 (水) 04時17分

 軍事的侵略を行わない帝国主義国もあるということをレーニン自身も述べていますね。

 (1)第一次大戦におけるスイスの武装中立は「真の帝国主義的政治」を覆い隠すごまかしであること、(2)「帝国主義的利益は領土の獲得にあらわれるだけでなく、金融上の獲得にもあらわれる」こと、(3)スイス・ブルジョワジーは30億フランの資本を輸出していること、(4)スイス銀行資本が大国の銀行資本と緊密に結びついていること、(5)スイスの観光事業、等々が「諸大国とスイスとの間での帝国主義的富の不断の分配を意味する」ことなどをあげ、スイスもまた立派な帝国主義国であるとレーニンは喝破しています。(論文のタイトルは『中立の擁護』)

 現代の新植民地主義を理解するための示唆が多く含まれていると思います。1916年当時でさえレーニンは新植民地主義の本質を暴露していたというのに・・・。日共はどこまでレーニンを蔑ろにすれば気が済むのでしょうか。

投稿: スルタンガリエフ | 2006年2月15日 (水) 00時57分

 あおざかなさん、今晩は。「現帝論」は色々評価があるようですが、ひとまず読んでみようと思います。

投稿: アッテンボロー | 2006年2月15日 (水) 00時19分

島崎「帝国主義論」についてだけ。
NKさんがかつてコメント欄でおっしゃっておられたと思うのですが、島崎帝国主義論というのは、中核派がそれまでの路線を変質させたひとつのメルクマールになった著作ではないでしょうか?とはいえ私も(ちょうど80年代の「貿易摩擦」がありましたから)日米争闘戦論には説得力を感じちゃったりしましたが、あの「現代戦争テーゼ」というのは当時から嫌いでした(なんかスタ・ブハ的なにおいをかんじちゃって。別に「戦争が不可避だから」たたかうのではなくて、今まさにそこで起きていることに対してたたかうんだろう、と)。理論的に「先制的内戦戦略」や島崎帝国主義論や「現代戦争テーゼ」が浮かび上がる過程と、その時期に組織的実践の視野がどんどん狭くなっていく過程と、ついにはともにたたかうべき人へのテロルを行使する集団になってしまった過程をきっちりと総括しなければなあと思っています。それがいわば「本多」主義を救出するための作業になっては何の意味もないでしょうけど、(その芽はそこに既にあったとしても)その「変化」の軌跡を自分なりにたどることにはそれなりの意味はあると思って「70年をどうする」といういいだもも・さらぎ徳二・鈴木迪夫・本多延嘉ほかの(69年3月時点の)討論集や本多著作選(手元には1,2,4,7巻があります)を用意しているのですが、どうしても「70年をどうする」でML同盟鈴木さんの「最近、三バカ(中核派、ブント、MLの同盟関係を革マル派が『三バカ連合』と呼んだことによる)の中で内ゲバは起こっていないし、当面起こる必然性もあまりない」なんていうところだけを、面白く読んでしまっています。

投稿: あおざかな | 2006年2月15日 (水) 00時08分

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