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2009年5月 8日 (金)

大阪中央郵便局移転と不動産利権

Photo  本日5月7日大阪中郵が取り壊して超高層ビルとなるために移転した。移転先は大阪駅前第1ビル。移転したのは大阪中央郵便局(郵便局株式会社)・ゆうちょ銀行大阪支店(ゆうちょ銀行株式会社)・日本郵便大阪支店大阪駅前分室(郵便事業株式会社 俗に言う郵便屋さん)。

 84年2月に、郵便輸送がそれまでの鉄道からトラックに変更された。郵便局では「59・2」(ごおきゅうに)と言う。国鉄分割民営化の影響で鉄道郵便局が廃止となったのだ。それまでは国鉄の駅前には大きな郵便局が各地にあった。大阪中郵もそうだし東京・名古屋なども駅前の一等地に存在する。御所郵便局の場合も国鉄御所駅まで昔はリヤカーや自動車を使って郵便を受け取りに行った時期があるらしい。奈良中郵・奈良西・生駒・王寺・移転前の大和郡山・同じく移転前の香芝・大和高田・天理・橿原・桜井・五條。思いつくまま並べてみたが、かつて16局有った奈良県下の普通集配局の殆どは国鉄か近鉄の駅前だ。集配特定局でも大和高田に集配および貯金保険の外務が移転して窓口のみになった新庄は近鉄のえきそばになる。郵政グループは旧国鉄に次いで一等地に不動産を所有している。しかも殆どが二階建てか三階建て。奈良中央ですら三階建てだし、大阪中郵も十階はない。知る限り殆どが低層だ。例外は大阪の福島などのように上部が職員官舎になっているくらいだろう。つまり再開発の余地が非常に大きい。

Photo_2  郵政省時代にも局舎を高層化してテナントとして貸し出そうという動きがあり、「通信文化新報」「逓信 耀」という郵政内部の情報誌(郵政官僚の天下り先)に計画が載ることがあったが、「民業圧迫」の圧力で頓挫した。日本生命などの「漢字生保」の運用は殆どが不動産賃貸と株や為替の運用なのに、郵政にはゆるされなかった。逆に言えばバブル期に儲け損なったが、漢字生保のような大損も無く、郵貯も簡保も無傷だった。逆ざやに悩まされて高金利時代の保険・年金商品をお客に黙って低金利商品と切り替えるなどと言う悪徳商法にも手を染めずに済んだ。外資系や異業種参入組のいわゆる「カタカナ生保」や損保子会社の「ひらがな生保」もバブル期には営業しておらず無傷であったため、その後急成長することが出来た。生保業界では出自によって社名が漢字であることが多い戦前以来の会社を「漢字生保」、カタカナやアルファベットの社名が多い外資系および異業種参入組を「カタカナ生保」、ひらがなが多い損保子会社を「ひらがな生保」と呼ぶ。セールスの手法も大きく違うが、基本的に「漢字生保」は素人のセールスレディーが義理人情プレゼントの「GNPセールス」、簡保やカタカナ生保・ひらがな生保はプロが丁寧な商品説明を行っている。それぞれの会社によっても良心的な営業を心がけている人間とそうでない人間が混在している。少なくとも郵政省時代の簡易保険は良心的なプロの集団だったと自負している。民営化によって郵政事業庁・郵政公社、かんぽ生命と移り変わる過程で大きく変質したことによって4月半ばの毎日新聞が連日報道したような簡易保険不払い問題が生じた。(毎日のスクープであったために朝日では社会面に小さく取り上げられただけ。ゴミ売り・3Kは毎日チェックしていないが、目を通した範囲内では全く触れていない。新聞は「後追い記事」を嫌がる。特にフジサンケイグループは、毎週木曜のドラマ枠を郵政グループが持っているためテレビ不況の昨今では郵政グループに批判的な報道は避けている。国営時代に散々郵政バッシングをしていたのが嘘のようだ)

 脱線したが郵政民営化によって郵便局社は不動産利権の宝の山となった。国鉄の所有地がそうであったように。大阪駅前にあった操車場は再開発の真っ最中。京都駅前の電車区があった場所にはビックカメラやキャンパスプラザが建っている。奈良駅前の国鉄宿舎跡地は巨大なホテルだ。不動産業界の構図についてはあまり知らないが、旧中曽根派と結託した業者だろう。今回は小泉が所属していた旧森派、現在の町村派あたりだと思う。だから麻生派領収の麻生太郎が郵政民営化見直し発言をしたのは分け前が少なかったからだろうし、総務大臣鳩山邦夫などは田中派から竹下派をへて平成研(通称津島派)だから、かんぽの宿問題について文句を言わない方がおかしい。補足しておくと田中角栄が特定郵便局長会を自民党最大の集票組織にした関係で、郵政は代々田中派とその後継派閥が利権を握ってきた。小泉は大蔵族・厚生族で郵政族とは敵対していたから、郵政関連の利権を徹底的に叩いて津島派を潰しに掛かった。今では郵政三事業の利権は津島派の手にはない。同じ事が国鉄分割民営化の過程で行われ、中曽根が建設省と国鉄の利権を田中派から奪い取り自家薬籠中の物にした。田中角栄の後継者である竹下登は、中曽根に頭を下げて総理にしてもらった。当時はまだ竹下派が自民党最大派閥であったにも拘わらずだ。(建設省および国鉄は田中派の利権が大きかった。角栄の選挙区であった旧新潟三区には新幹線の駅が三つあるし、道路特定財源としてのガソリン税を導入したのも角栄だ。)

 90年代に入り、アメリカ政府が自国の不況脱出のために年次改革要望書で社会保険制度の解体と簡易保険民営化でアリコやアフラックが営業しやすいように、郵便貯金の預かり資金をゴールドマンサックス・シティバンクJPモルガンなどが運用出来るように財政投融資の廃止と民営化を求める。郵便に関してはクロネコヤマトと提携関係にあったFedEx(フェデラルエクスプレス)がニュースステーションに盛んにコマーシャルを流し、ヤマトの別働隊として民営化の世論操作を行った。この時の経験があるから、報道ステーションや朝生・サンプロなど電波芸者が司会を務める政治バラエティー等は見る気もしなかったが、コマーシャルを録画しておけばどの企業の広報担当であったかが証拠に残ったのにと残念だ。WikipediaによるとFedExの「主要な競争相手はDHL、UPS、TNT及び各国郵便公社・会社(USPS、カナダ郵便公社、ロイヤルメール、JP 日本郵便など)である。」 日本国内の企業でもオリックスは不動産部門と生命保険部門で、トヨタはシステム販売で、都銀の中でも当時の住友銀行などはアメリカ企業と利害が一致したので積極的に郵政民営化のために策動し、見事に利権を手に入れた。

 郵政族のドンであった橋本龍太郎が総理大臣に就任した96年には、省庁再編の動きや米軍基地再編の動きとも相まって郵政民営化やむ無しと判断したのだろう。通信政策局 ・電気通信局・放送行政局と言ったテレビ・ラジオ・電話などの許認可権、いわゆる郵政マルチメディア利権を温存するために総務省に移行させ、現業部門で利権の少ない郵務局(郵便関係)・貯金局・簡易保険局については01年に郵政事業庁、03年の郵政公社を経て07年10月の民営分社化で持ち株会社としての日本郵政株式会社・郵便局株式会社・郵便事業株式会社(郵便屋さん)・ゆうちょ銀行株式会社・かんぽ生命株式会社が発足した。国営時代は郵政大臣・郵政事業庁長官・郵政公社総裁と、トップは一人だけであったが、一挙に社長が5人になった。焼け太りそのものである。ちなみにそれぞれ、日本郵政初代社長は西川善文(住友銀行頭取を経て三井住友銀行頭取)社外取締役にトヨタ自動車の奥田碩取締役相談役・郵便局初代会長川茂副社長夫(イトーヨーカ堂)と初代社長寺阪元之(スミセイ損保)・郵便事業会社は北村憲雄(イタリアトヨタ)と社長團宏明(郵政公社副社長兼日本郵政副社長で郵政生え抜きだが、民営化推進派)・ゆうちょ銀行は会長古川洽次(三菱商事)社長高木祥吉(日本郵政取締役兼代表執行役副社長兼務)ここは金融関係出身者に適任者が居なかったとされるが、下手に持ってくると三井住友フィナンシャルグループの邪魔になるからだと現場では噂していた)・かんぽ生命会長進藤丈介、社長山下泉 (郵便局員時代の資料が手元に無いので、出身企業をWikipedia調べたが記載がない)基本的には郵政民営化の論功行賞の結果人事だ。

 最初に民営分社化後のトップ人事が発表された時、西川善文の名を見てトンでもないのが社長になったと噂した。西川が住友銀行頭取時代に起こった、取引先企業に対する融資と引き替えにリスク商品を押しつけ大損させた話を貯金・保険の関係者の多くが知っていたからだ。郵便局は酷くなると誰もが予想した。

 又しても脱線したので不動産について話を戻す。サブプライムローンの破綻とアメリカ発金融危機とで、今は事実上の世界恐慌だ。東京都心では数年前の企業だけの好景気の時期にオフィス需要を見込んだ超高層ビルが続々着工したが、既存のテナントビルはあちこち空室が目立つために完成後に採算が取れる物件は少ないと言われている。東京一極集中の中でさえこの状態だから地方のテナントビルがどうなるか分かりきった話だ。バブル崩壊によって売却に失敗した国鉄用地の二の舞になる。おそらく郵便局会社の戦略は破綻する。もしくは煽りを受けたテナントビルががら空きになる。賃貸料金の下げ合いになって破綻するところも出てくるだろう。それでも局舎改築を請け負う設計事務所・ゼネコンなどは美味しいところだけ持ち逃げ出来る。

 昼のニュースで大阪中郵移転を報道していたので書いてみたが、気づいたら日付が変わっていた。コメントやメールでの反応を見て、次回に何を書くか決めたいと思う。ここで触れていないネタとしては4月1日および5月1日発令の人事異動に関する問題点と、病気で長期間休んでいる局員を飼い殺しにしている実態について、僅かだが情報がある。  

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中央派は「体制内労働運動打倒!」と息巻いているくせに、何故、JP労組にしがみついているのだろうか(特に旧東京中郵の中央派!)自治労、日教組、国労についても同様。多数派になることは100%ありえないのだから、中央派のやる気のなさが窺えると言うものだ

投稿: 革共同反中央派 | 2009年5月10日 (日) 00時24分

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