「御所の票はアテにしない」by奥野信亮
近く行われる第45回衆議院選挙を巡って、いつのどの会議・会合での発言であるかまでは特定出来ていないのであるが、奥野会(奥野誠亮・信亮後援会の通称)で掲題の発言が為されたという。十数名の奥野会会員・元会員から聞いたので御所市においては相当広く知れ渡っている事実である様だ。ある元自民党員は「御所の票をアテにしないやなくてアテに出来んの間違いやろ」と吐き捨てた。実際、奥野信亮は05年の「郵政選挙」の際には選挙本部・事務所を地元の御所市ではなく香芝市に設置した。今回の選挙では大和高田市に設けている。前回選挙の際、御所市での得票は民主党候補にダブルスコアの大勝をしているのであるが、今回はその地盤が完全に崩壊している。
元々御所市というのは信亮の父親誠亮の出身地で、1987年(昭和62年)竹下内閣国土庁長官時代に「あの当時日本に侵略の意図は無かった」等と日中戦争が侵略戦争であることを否定するなどの妄言を吐き長官職を辞任せざるを得なくなったのであるが、それでも地元の人々は誠亮を支持してきた。しかもこの誠亮は地元への利益誘導は極一部の人々にだけしか持ってこなかった様で、自民党議員にしては珍しく銭金ではなく「思想」で大衆を組織している、敵ながら天晴れな爺と言う印象があった。御所の庶民は「奥野さんは御所に何も持って来て呉なんだ」と言うほどで、時折服部安司(元衆院議員・参院議員で服部服部三男雄前参院議員の父親)が郵政大臣であった時に、地盤の北葛城郡河合町に京都伏見から近畿郵政研修所を移設させたこととの比較が為されたりした。誠亮というのは奈良県第二の名門校である旧制畝傍中学から一高をへて東京帝大に進学し、戦前は内務省官僚として特高警察課長を務めるなどの極右反動思想の持ち主である。
で、まあ、このお江戸育ちの二代目さんは基本的に御所とは無縁の人生を送ってきたのである。日産自動車に入社し、系列会社で社長などを歴任したのも誠亮とのパイプを繋ぎたかった日産首脳部の思惑と言われるほど親の七光りで人生を渡ってきたオッサンである。しかも03年の衆院選挙で当時60才にして世襲議員として立候補した際の売り文句が「企業経営者の感覚を国会へ」であった。96年日産自動車取締役、99年日産グループのバンテック社長、03年バンテックホールディングス社長という時期、日産はカルロス・ゴーン体制の下で大量の首切り合理化を行い会社に忠誠を尽くしてきた労働者数万人を弊履のごとく捨て去っていた時期である。つまり小泉「構造改革」の下での庶民切り捨て・「格差社会」拡大に格好の人材であった。06年にはバンテックホールディングス取締役に選出されているので日産との関係は国会議員となった今現在でも切れていない。
御所の或飲食店経営者は「あいつアホや」と公言した。03年に東京育ちの「若殿様」が初めてお国入りし、地元のアザレアホールでお目見えの行事を行った時のことをこう述懐している。「初めての選挙やのに、普通は行儀良う座ってなアカンのに、あいつは足広げてふんぞり返ってた。」またある人は一昨年の御所市長選挙を巡る確執で一気に見放されたとも述べている。御所市では07年に市長選挙と市議補選とが同日投票で行われているのであるが、市長前職が引退の意を表明しているにも拘わらず続投を要請し続け、結局翻意させることが出来ずに新人同士の対決となった。信亮が推したのは現市長であるが、対立候補は奥野家の国家老とも言うべき重鎮である。自民系同士の泥仕合の結果、市長選では信亮が推した現市長が勝利したが、市議補選では民主党新人が信亮の推した自民系新人に圧勝した。そしてこの選挙が奥野会に深刻な分裂をもたらした。信亮・現市長ラインと対立候補系とで真っ二つに割れたのである。しかも約400人いた御所市内の自民党員が今現在では90名程度と約5分の一に激減した。
奥野が出馬する奈良県第三選挙区は香芝市・葛城市・御所市・大和高田市および北葛城郡王寺町・上牧町・河合町・広陵町・三郷町から成るのだが、市長・町長の中で奥野支持を明確にしているのは大和高田市長唯一人である。御所市長ですら態度を表明出来ないほど信亮の旗色が悪いのだ。大和高田市とはどの様な町か、以前地元ネタの第一として「ドッジボール大会」という記事を書いたのだが、ハッキリ言って中曽根行革による電電公社(現NTT)・専売公社(現JT)・国鉄(現JR)の民営化によって寂れた町である。実は御所市も同様で、電電公社の営業所は廃止・保守部門は奈良市に集約、国鉄の駅は要員削減され、今現在はシルバー人材センターに駅業務を委託しているのが二駅で後は無人駅が二つ。電電公社・専売公社・国鉄の民営化に国会で賛成投票したのは先代の誠亮、郵政民営化に賛成投票したのは信亮である。御所も大和高田も、奥野親子によって寂れたと言っても過言ではない。この様な人物がホームページで「7つの約束」の④として「地域の生活を守り、地方の特色を生かす、地方が主役の地方分権を推進します。」と書いて果たして信用出来るであろうか?
「奥野を落とせ!!」 これが民意である。
そうそう、書き忘れたが誠亮・信亮の親子間でも諍いがある。息子の旗色悪しと判断した誠亮が、地道に後援会会員を回って信亮支持を要請しているらしいが、それに対して信亮は「余計なことをするな」と文句を言ったそうである。「親の心子知らず」の典型であろう。親子間でも相争い、後援会も真っ二つ。奥野信亮に未来はない。
| 固定リンク
| コメント (62)
| トラックバック (23)
最近のコメント